「スタートアップの始め方について学ぶな」とポールグレアムが述べている真意について考えてみた
先日こんな記事(スライド)がバズっていた。
www.slideshare.net
上記のスライドではY Combinator創業者のポールグレアムやPayPal創業者のピーターティールが述べる、スタートアップの成功に不可欠とされる「逆説的な」エッセンスを解説されている。
そこで触れられているのが、ポールグレアムが「スタートアップの始め方を学ぶな」と述べているということだ。
彼はスタンフォード大学での起業講座においても同様のことを学生に伝えている。
スタートアップの始め方を教える講義で「スタートアップの始め方を学ぶな」と言うのは明らかに矛盾しているが、その言葉の裏にある真意について考えてみた。
講義の中でポールグレアムが述べていることを要約すると以下のようになっている。
- スタートアップが成功するためにはスタートアップに関して学ぶ必要はない
- スタートアップが学ぶべきことはユーザーについてのみ
- ユーザーやその課題の存在する業界に関してプロフェッショナルになるべき
- Facebookが成功したのはマークザッカーバーグがスタートアップに詳しかったからではなく、ユーザーについて深く理解していたから
つまり、彼が言いたいのは「スタートアップについて詳しく学んでいる暇があったらユーザーについて学びなさい」ということである。
解決に値する課題のことやその課題が存在する業界について深く理解することが、スタートアップが取り組むべき最初にして唯一の命題だということであろう。
一方で、ユーザーについて詳しく学びイケている事業を立ち上げたにもかかわらず、スタートアップが失敗してしまうこともあるのが現実だ。
しかも、その原因が共同創業者の選び方に間違えたがために仲間割れしたり、会社設立時の資本政策をあまり考えていなかったために資金調達が上手くいかなかったりなど、事前に防ごうと思えば防げたかもしれないことである場合が多々ある(とよく耳にする)。
こうした現実があることは恐らくポールグレアム自身がよくわかっていることだと思う。
それでも彼が「スタートアップの始め方を学ぶな」と述べるのは、スタートアップに関して学ぶばかりでユーザーについて学ぼうとしないスタートアップがあまりにも多いからなのではないかと推測される。
つまり、彼の発言の真意は「スタートアップに関して最低限学んだほうがいいことは確かにある。だが、その最低限を学んだあとはとにかくユーザーのことだけを学びなさい。」ということだったのではないだろうか。